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高市政権の減反政策は「食料安保」への逆行

2025 11/10
社会問題 農業政策・食料安全保障
2025-11-10

――いま求められているのは「減産」ではなく「増産+価格保証」です

はじめに:米づくりをめぐる分岐点

2025年秋、高市早苗政権のもとで鈴木憲和農林水産大臣が「需要に応じた米生産」を掲げ、2026年産米の生産目標を5%(約37万トン)削減すると発表しました。表向きには「需給の適正化」とされていますが、実際には減反政策の再開にほかなりません。

しかし今の世界情勢――戦争、異常気象、物流の混乱、輸入穀物の高騰など――を見れば、この方針は食料安全保障の観点からきわめて危険だといえます。日本が守るべきは「市場の均衡」ではなく、「国民の食の安全」そのものではないでしょうか。

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減反政策の背景とその限界

鈴木農水相は就任以来、「米の需要が減っている」「過剰生産は価格下落を招く」と繰り返してきました。確かに、国内の米需要は年1〜2%ずつ減少しています。しかし、それを理由に生産を削るのは短絡的です。

日本の食料自給率(カロリーベース)はすでに30%台に落ち込み、輸入依存度は年々高まっています。気候変動や国際紛争によって輸入リスクが上昇するなか、主食である米の生産を減らすという判断は、国の備えを自ら弱める行為にほかなりません。

米は「余る」ことが安全保障であり、「足りない」ことこそ最大のリスクです。

日本経済新聞
食料自給率4年連続横ばい 24年度38%、国産米の消費増えるも小麦減 – 日本経済新聞 農林水産省は10日、2024年度の食料自給率がカロリーベースで4年連続の38%だったと発表した。国産米の消費量が増加したものの、作況の悪化で国産小麦の消費が落ち込むなどし…

減反がもたらした悪循環

長年続いた減反政策の影響で、日本の米農家は大きく減少しました。若い世代の就農意欲が低下し、耕作放棄地が増え、地域の農地を守ることが難しくなっています。

農林水産省の統計によると、1990年代初頭には約400万戸あった販売農家が、現在では150〜180万戸にまで減少しました。つまり、半数以上が姿を消したことになります。生産を抑えても価格の安定にはつながらず、将来の生産力そのものが失われつつあるのが現実です。

米価下落は「価格保証」で防げる

米価が下がることを恐れて生産を控える必要はありません。もし市場価格が下落したとしても、政府が差額を補填する仕組み(価格保証・所得補償)を整えればよいのです。

欧米ではすでにこうした制度が一般的に導入されています。

国制度名内容
🇪🇺EU共通農業政策(CAP)生産量や市場価格に関係なく一定の所得を補償する直接支払い制度
🇺🇸米国PLC・ARC制度市場価格が基準を下回った場合に差額を補填する制度
🇯🇵日本戸別所得補償制度(2010〜2013)米価下落分などを農家に直接補償する制度

民主党政権時代に導入された「戸別所得補償制度」は、農家の安定と自立を支える画期的な仕組みでした。実際、導入初年度(2010年度)には多くの農家が経営改善に前向きな姿勢を見せました。しかし、自民党政権が2013年にこの制度を廃止し、市場任せの農政へ転換したことで、米価の変動リスクが高まり、生産意欲や自給率の低下を招いたと指摘されています。

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「増産」は国を守る戦略になる

戦争や災害などで輸入が止まってしまったとき、本当に頼りになるのは国内の生産力と備蓄です。米のように保存性が高い作物なら、余剰分を国家備蓄に回すことができます。これこそが「戦略的な増産」であり、国を支える防衛の一部としての農業といえるでしょう。

政府が余った米を買い上げ、学校給食や福祉施設、低所得者支援に活用すれば、

  • 農家は安定した収入を確保でき、
  • 国は非常時に備えられ、
  • 国民は安心して米を食べ続けられる、

という「三方良し」の政策が実現します。

農業をはじめたい!:農林水産省

国家としての食料安全保障を再構築する

今の日本に求められているのは、「財政負担を恐れて生産を抑える政策」ではなく、国家としての食料備蓄と増産戦略です。農業を「採算の悪い産業」と見るのではなく、「国を守るインフラ」として再評価するべき時期に来ています。

そのためには、次のような取り組みが不可欠です。

  • 減反政策の中止と増産の奨励
  • 価格保証・所得補償制度の再導入
  • 政府備蓄の拡充と地域単位での備蓄強化
  • 国産米の用途拡大(学校給食・輸出・加工など)
  • 農地維持と若手就農支援の拡充

これらを柱とする「食料安全保障基本法」の再構築が、国の未来を左右するといっても過言ではありません。

結論:市場任せでは国は守れない

鈴木農水相の言う「需要に応じた生産」は、一見もっともらしく聞こえますが、食料安全保障の視点から見れば極めて危うい発想です。短期的には市場の需給バランスが整っても、長期的に見れば国内の生産基盤を弱体化させ、危機時の対応力を奪います。

市場は国を守りません。価格や利益を基準に動く市場の中では、国民の命や食の安定が後回しにされがちです。守るべきは、利益ではなく、国民の命と食の安全です。

だからこそ、今こそ政策の方向を転換すべきです。「減産」ではなく、「増産+価格保証」によってこそ、農家の生活も国民の安心も守ることができます。米づくりを支える仕組みを整えることが、将来の日本を支える確かな土台になるのです。

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